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高松高等裁判所 昭和47年(ラ)45号 決定 1972年11月28日

抗告人

日生観光株式会社

右代表者

近藤日生子

抗告人

富安須美子

抗告人

田中好英

相手方

宮地電機株式会社

右代表者

宮地恒治

右抗告人らから、松山地方裁判所西条支部昭和四七年(ル)第二四号抵当権付債権差押、

同(ヲ)第一五七号右債権転付命令の各申請事件につき、同裁判所が前者につき同年二月一五日付、

後者につき同年九月三〇日付でなした各決定に対し、即時抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙のとおりである。

そこで検討するに、原審の本件差押命令および転付命令の各決定は、相手方を債権者、申請外本田克己を債務者、抗告人らを第三債務者として、債務者の本田が第三債務者抗告人会社に対して昭和四六年一一月二四日貸付けたとする金二、五〇〇万円の抵当権付貸金債権の一部につき(抗告人富安、同田中は抵当不動産の所有者)なされたものであり、先ず差押命令の後七ケ月位して転付命令がなされるに至つたものであるが、転付命令は債務者本田に対し昭和四七年一〇月二三日、抗告人会社に対し同年一〇月三日、同富安に対し同年一〇月四日、同田中に対し同年一〇月三日それぞれ送達されているところ、これに対し本件即時抗告の申立が同年一〇月一一日原審に申立書を提出してなされたものであることが記録に徴して明らかである。従つて、本件債権に対する強制執行手続は、右転付命令が債務者および第三債務者に送達されたときすでに終了し、もはやこれに対し何人からも抗告その他の執行手続上の不服申立の余地はないものというべきであるから、本件差押命令ならびに転付命令に対する即時抗告は許されない。なお、債務者本田の本件転付債権は巻面額のない債権とはとうていいえないものであり、抗告人らが同債務者を相手として本件転付債権ならびに抵当権につきその不存在等を主張して訴を提起し、現在係争中であるとの事実は、その訴訟の結果によりあるいは本件転付債権等の不存在が認められ、転付債権等の移転、請求債権(相手方の債権)弁済等の転付命令の実体的効力の生じない事態が発生するに至るかも知れないが、そのため、本件転付命令等自体が執行手続上当然に違法、無効となるものではなく、また本件転付債権等が巻面額のない債権となるものでもない。

そこで本件即時抗告は不適法であるからこれを却下することとし、抗告費用の負担につき民訴法八九条、九三条一項本文を適用して主文のとおり決定する。

(合田得太郎 谷本益繁 石田眞)

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